第308章 見逃してくれ

中林真由は彼の腕から逃れようともがいたが、もはやその気力すら残っていなかった。

車内の空気は薄く、息苦しい。鼻先を掠める今野敦史の匂いに、ただ胸が締めつけられるような切なさと諦めだけが込み上げてくる。

私に怒っていないだと?

腹が立つのはこっちの方だ。

たとえ私が彼を不機嫌にさせたとしても、だからといって彼が何をしても許されるというのか。それが道理だとでも?

どうして二人の関係において、すべてのルールを彼が決めるのだろうか。

中林真由は怒りで言葉も出ず、ただ必死に涙を堪えた。

これからは体調が悪い時は絶対に出かけない——そう心に誓うほど、今の自分は無様で惨めだった。

今野敦史...

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