第309章 無情

翌日、中林真由が目を覚ますと、病室にはもう誰もいなかった。

昨日、今野敦史が来ていたような記憶がうっすらとある。だが、彼がいつ立ち去ったのかは定かではない。

窓がわずかに開いており、そこから忍び込む微風に、彼女は肌寒さを覚えた。

扉の向こうからは、他の患者を見舞う家族の温かな声や、看護師の慌ただしい足音が聞こえてくる。なぜだか、それが胸を締め付けた。

中林真由は布団に顔を埋める。そこには微かに、今野敦史の匂いが残っていた。

昨夜、彼がここにいた確かな痕跡だ。

枕に残る染みを見て、自分が泣いていたのだと悟る。

今野敦史が何かを囁いたのが聞こえ、涙が止まらなくなったような気がする。...

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