第357章 報酬

中林真由は目の前のケーキを見つめ、ふいに食欲を失った。

今野敦史があれほど阿部静香を庇い、結婚するとまで断言しておきながら、二人の間に何もないはずがない。

彼女が知る限り、今野敦史という男は、自分自身を犠牲にするような殊勝な性格ではないのだ。

信じられるわけがない。

なぜ彼が言い訳を重ねるのか理解できなかったが、とにかく彼を信じることができなかった。

もし阿部静香とやましい関係がないのなら、彼女のために中林真由を敵視し、傷つけたあの行動は何だったというのか。

中林真由は深く息を吸い込んだ。胸が張り裂けそうなほど痛む。

過去の傷は決して癒えてなどいなかったのだ。少し思い返すだけで...

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