第367章 法を犯す

「お母さん、約束したでしょ? 検査の結果がよければ退院できるし、もう新しい家も見つけてあるの。検査が終わったら家に帰ろう」

中林真由は優しくそう言い聞かせた。母さんが少し不安になっているだけだと思ったからだ。

何しろ人工心臓だ。万が一トラブルがあれば、取り返しがつかないことになる。

石田渉も横でしきりに慰めているが、中林雪乃の情緒は一向に安定しなかった。

真由は少し妙だと思った。母さんはこれまで検査を怖がったことなど一度もなかったのに。

病院での生活も長い。多少の緊張はあるにせよ、ここまで取り乱すのは不自然だ。

彼女は疑わしげな視線を石田渉に向けたが、渉は慌てて首を横に振り、自分...

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