第405章 あなたが欲しい

中林真由は踵を返すと、早足でその場を去った。

風はそれほど冷たくないはずなのに、頭のてっぺんから爪先まで凍りつくような寒さを感じる。

頬に残る平手打ちの熱だけが、何よりも痛々しく灼けついていた。

叩かれた頬は酷い有様だろう。あてもなく歩き続け、マンションを出たところで、中林真由は足を止めた。

まさか、今野敦史の車がまだエントランスに停まっているとは思わなかったのだ。

今野敦史は車体に背を預け、小首を傾げてこちらを見ている。

中林真由は一瞬呆気にとられたが、すぐに彼のもとへ駆け寄った。「まだ、いたの?」

陽射しを浴びた今野敦史の表情は、どこか柔らかい光を帯びている。「いて悪いか?...

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