第45章 女伴

中林真由のその言葉に、阿部静香はほっと息をついた。

「じゃあ、お医者さんには診てもらったの?私は何でもないって言われたのに、敦史が大げさなんだから。わざわざ仕事を休んでまで私を連れてきたのよ」

彼女は今野敦史の腕にぎゅっとしがみつき、いかにも甲斐甲斐しい小鳥といった様子で、その目には隠しきれない得意げな色が浮かんでいた。

堂々たる今野社長が仕事を休み、たいしたことのない些細な病気の若い恋人を連れて病院に来るなど、実に愛情が深いことだ。

彼女は中林真由を刺激するつもりだったが、中林真由の表情には微塵の変化もなかった。

「私は薬をもらうだけなので、診察は必要ありません。用は済みましたの...

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