第52章 大団円

「昨日は見かけなかったな」今野敦史はグラスに手をつけなかった。

北村一馬は肩をすくめる。「俺が最後に来たんだよ。お前はあの時、彼女を連れて帰るのに夢中で、俺が見えるわけないだろ?」

「それにしても、高木文也の奴が昨日一時間以上も俺のところで泣きついてきてな。お前が奴の女を奪ったって」

「俺が奴の女を奪った?」今野敦史は思わず呆れて笑ってしまった。

「お前、阿部静香と公認の仲になったんじゃないのか?それでいて中林真由を手放さないつもりか?」北村一馬は彼を横目で見る。

北村一馬には今野敦史の考えが理解できなかった。彼だけでなく、仲間内の誰もが同じだった。

阿部静香のことは皆も会ったこ...

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