第69章 彼を追い出す

今野敦史は無造作にブラインドを閉め、外からの視線を遮った。

中林真由は手にした履歴書を前に、実に途方に暮れていた。彼女はもちろん江口花が誰であるかを知っている。でなければ、わざわざ呼び寄せたりはしない。

江口家の令嬢だ。今野敦史が一度採用してしまえば、気軽に解雇することはできない。つまり、彼のそばに居座るつもりなのだ。

肝心なのは、この小娘が完全に今野敦史の要求に合致していることだった。

美しく清純な容姿で、その瞳には彼しか映っていない。あれほど年月が経っても、なお彼のことを忘れられずにいる。

中林真由に言わせれば、江口花は阿部静香よりも今野敦史にふさわしい。少なくとも、家柄は釣り...

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