第36章

藤原美佳の顔色が一瞬で蒼白になった。彼女は樋口浅子が本当に自分にこんな仕打ちをするとは信じられなかった。

「あなたたち、私が誰か分かっているの?よくも私を追い出そうなんて」

警備員たちは動じることなく、二歩前に進み、藤原美佳にさらに近づいた。

藤原美佳は彼らが本当に自分を捕まえるのではないかと恐れ、下々の人間に触られないよう、二歩後ずさった。

「樋口浅子、覚えておきなさい。絶対に許さないわ!」藤原美佳は樋口浅子を恨めしげに睨みつけると、くるりと身を翻して走り去った。

空からは細かい霧雨が降り始めていた。藤原美佳は長いドレス姿で、微風に乗った細かい雨滴が身体に降りかかり、確かに肌寒さ...

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