5-隣人と意地悪さ
このシフターと一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、運命の神様は何か間違いを犯したんじゃないかと思えてくる。
この糸を断ち切る方法、あるいはどうにかして取り除く方法はないものだろうか。そんなことが起きた例は一度も見たことがないけれど。死においてさえ、人々は結ばれているのだ。
かつて墓地のそばを通りかかったとき、妻の墓参りをしている老人を見かけたことがある。赤い糸はまだ彼の胸から伸びており、地面の下へと消え、彼を永遠に愛する人と繋いでいた。それは憂鬱な光景だったが、どこか死の香りがするロマンチックさもあった。
私はテーブルの向かいに座る男を見返した。彼と永遠にリンクされているなんて想像もできない。私にこの男をソウルメイトとしてあてがった運命が、本当に自分のしていることを分かっているのだと信じたいところだ。
「ああ、君の双子の姉妹とは友達になるよ。それが運命だからな」彼は私を睨みつける。
「あなた、シフターでさえないのに、どうして運命が私の姉妹と友達になれなんて望むのよ?」今度は私が彼を睨み返す番だった。
「それが何の関係があるっていうの? ケインさん、誰にだって運命はあるわ。生まれつきの事情なんて関係ない。私が誰かを見るときに見えるのは、その人の運命の糸なの。種族じゃないわ」
猛烈に腹が立ってきた。この男が私のソウルメイトだなんて。どうしてこんなに嫌な奴なんだろう? 赤い糸の相手とようやく出会えたというのに、こんな初対面は絶対に期待していなかった。
もう少し甘い展開を期待していたのに。キュートとか、あるいはロマンチックな何かとか。それなのに現実は、怒鳴られて侮辱されるだけ。はいはい、よかったですね、私。彼はしばらく私をじっと見つめていた。
「ベラミーだ」突然、彼が言った。
「え?」私は完全に混乱した。名前ならもう聞いたはずじゃなかったっけ? シフターはひどく真剣な表情をしている。
「ベラミーと呼んでくれ。ケイン氏は私の父だ」
彼の表情は悲しげだ。父親に何があったのかは知らないけれど、息子にこれほど悲痛な顔をさせるのだから、無事でピンピンしているわけではないのだろう。私は頷いた。
「分かったわ。じゃあ、ベラミー。私のことはライアンって呼んで」と提案する。彼が私の名字を使っているのに、私が彼をファーストネームで呼ぶのは超気まずいからだ。それに、こいつは私のソウルメイトなのだ。いずれはお互いの名前を呼び合う気まずい段階を乗り越えなきゃならないんだから、今済ませておいたっていいじゃない?
そのシフターは――ベラミーと呼ぶように自分に言い聞かせる――私がすんなり同意したことに安堵したようだった。それと……彼、妙に深く呼吸してない?
たぶんシフター特有の癖なのだろう。彼らは匂いで相手の感情や反応がよく分かるという話を聞いたことがある……ちょっと気味が悪いけれど、便利だとは思う。
「さてベラミー、あなたにいくつか質問があるの」私が切り出すと、彼は面倒くさそうな顔をした。まるで歯医者の予約があることを告げられたかのような反応だ。
「ちょっと、落ち着いてよ。難しいことを聞くつもりはないから。少なくとも、そうじゃないはずよ」
ためらいがちに、ベラミーは頷き、続けてくれと手で合図した。
「まず、どうやって私を見つけたのかどうしても知りたいの。メモにはフルネームさえ書いてなかったし、教えるまで知らなかったでしょう? 『ボーダーライン』の誰かから私の情報を聞き出したとも思えないし」と私は推論を述べる。ベラミーは肩をすくめた。
「メモに君の匂いが染みついていたんだ。あの夜、妹が行った場所はあのレストランだけだったから、メモは妹のバッグに入れられたものだと推測して、そこへ向かった。そこから君を見つけるのはすぐだったよ。君の匂いは……極めて辿りやすかったから」
また深く息を吸い込みながら、彼はそう分析した。私は肩をすくめる。
「裸足で家まで歩いて帰ったからかもね」私は何でもないことのように言った。彼は困惑した様子だ。
「裸足? なぜそんなことを?」彼は不思議そうに尋ねる。私は入り口に脱ぎ捨てておいたヒールを指差した。
「だって、あの靴は邪悪だもの。私の足を噛みちぎろうとしてたんじゃないかって思うくらい。悲しいことに、仕事の制服の一部なんだけどね」と私は説明する。彼は片眉を上げた。
「足を噛みちぎるだって? まさか、そこまで酷いわけじゃ……」彼は言葉を濁した。私は片足を持ち上げ、ウサギのスリッパを脱いでみせた。青白い肌には、マメや赤い擦れ傷が痛々しく刻まれている。
「断言するけど、それくらい酷いのよ」彼によく見えるように足を掲げながら、私はきっぱりと言った。ベラミーの顔が恐怖に引きつる様は、もはや滑稽なほどだ。あろうことか、彼は身を乗り出して私の足を掴み、自分の方へと引き寄せた。
自分の行動の奇妙さに気づいたのだろう、彼は突然凍りついたかと思うと、掴んだときと同じくらいの素早さでパッと手を離した。
気まずい沈黙が流れる中、私はウサギのスリッパを履き直した。私は次の質問に移ることにして、彼が「匂い」で私の居場所を突き止めたという事実については考えないように努めた。プライバシーの侵害か何かのように思えるが、人のことを言えた義理ではない。私だって、四六時中他人の人間関係を嗅ぎ回っているのだから。それに、手紙を残したのは私だ。
「その……妹さんは手紙を見てどう反応したの?」彼の答えを聞くのが、実はとても怖い。彼女に嫌われたくないのだ。ベラミーは床に視線を落とした。
「実は、あいつはまだ見てないんだ。バッグからいつもと違う匂いがして――たぶん君の匂いだろうけど――彼女が見る前に俺が抜き取ったんだ。あいつは興奮してたから、気づかなかったみたいだ」
警告が彼女に届かなかったことに失望すべきか、それとも安堵すべきか、自分でもよくわからなかった。
「わざわざ私を探し出すなんて、驚いたわ」私がそう言うと、彼は居心地悪そうに身じろぎした。
「俺の妹だからな。手紙に何か重要なことが書かれているのか確かめる必要があった。それに……」彼は言い淀んだ。
「トリスタンのことは、どうも信用できなくてね。あいつとは昔から反りが合わないんだ」
それはつまり「トリスタンは大嫌いだし、どうしようもないクズ野郎だと思っている」という男なりの遠回しな表現だと私は解釈した。そう口にしようと口を開きかけた瞬間、ドアのところに現れた人物に遮られた。
ポールが入り口で腕を組み、仁王立ちしていた。私たちは言い合いに夢中で、どちらもドアを閉めるのを忘れていたのだ。ベラミーは瞬時に立ち上がり、見知らぬ男に対峙するように前へ出た。ポールが口を開く。その声色には、あからさまな嫌悪が滲んでいた。
「シフターか?」ベラミーの刻印(マーク)を睨みつけながら、彼は吐き捨てた。
「ライアン、君はいい子だと思っていたんだがね。まさか私の建物に、四六時中シフターを招き入れるつもりじゃないだろうな」彼が噛みつくように言う。ベラミーが一歩近づき、防御の姿勢を取る。私は立ち上がり、二人の間に割って入った。
「ベラミー、隣の人は無視して。マナーを知らないみたいだから。ポール、私の部屋から出て行って。この建物の持ち主はマギーよ、あなたじゃないわ。私が誰を招こうと勝手でしょ」私は彼に釘を刺した。確かにベラミーは少し嫌な奴かもしれないけれど、種族を理由に隣人に侮辱させるわけにはいかない。ポールが私を睨みつけた。
「ふん、この野獣がドアを叩き壊さんばかりの勢いだったから、様子を見に来てやったのに、この言い草か。下の階まで聞こえてたぞ。『魔法族(マジック)』ってのは、どいつもこいつも自分たちにはルールが適用されないとでも思ってるんじゃないか?」
彼は最後の言葉をベラミーに向けて放った。ベラミーは今にもポールを殴り倒しそうな顔をしている。
彼の気持ちもわかる。ポールは私の神経をも逆撫でしていた。
私は何も言わず、パジャマの袖を腕の限界まで捲り上げた。私の刻印の下端がわずかに見える程度だが、それだけで十分だ。ポールの表情が曇る。
「なんだと? マギーはこの建物の住人は全員『安全』だと約束したはずだ。あの婆さんを騙すなんて造作もないことだったんだろうな?」
私の中で何かが切れた。ベラミーを侮辱されるのは百歩譲っていい、彼とは知り合ったばかりだ。私への侮辱?
まあいい、どうせ既に大勢の人に言われていることだし、それくらいは耐えられる。でも、マギーを? 彼女は私が知る限り最高の人格者だ。彼女についてそんな口を利かれるのは我慢ならない。手を出すべきではないとわかっていても、自分を抑えられなかった。脳が認識するよりも早く手が動き、私は力任せに彼の頬を平手打ちしていた。
