53-利己的で恥ずかしがり屋

さっきの墓にたどり着くと、私は立ち止まり、彼の手を離した。彼の手は力なく脇へ落ちる。私は墓を見つめたまま、彼と目を合わせるのを避けた。

「私が自分勝手だと言ったあなたの言葉、正しかったわ」私は切り出した。

「私、人を信じるということが分からないの。今まで、本気で信じようとしたことさえなかった。近づこうとする人たちから逃げて、隠れて、避けてきた。でも、ひとつだけずっと信じてきたものがある。それは運命よ。私に見えるこの『糸』。糸は決して私を欺かない。良いことも悪いことも、真実だけを見せてくれる。運命は私の感情なんてお構いなしだから、手加減なんてしてくれないけれど。見えるものが辛すぎて、いっそ見...

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