第33章 誰にも要らない子供

料亭の個室は広かった。上座に座っているのは、矢野行正ただ一人。目の前には湯気の立つ茶が一杯。

深いグレーのスーツをきっちり着こなし、髪は一分の隙もなく撫でつけられている。表情は会社の会議のときと同じだった。硬い。冷たい。怒声などなくても、人を圧する。

「座れ」

顎をわずかにしゃくり、小林舞香に向かいの席を示す。

舞香は黙って、その正面に腰を下ろした。

島田秘書は一礼して外へ出ていき、音もなく扉を閉める。

個室に残ったのは、二人だけ。

矢野行正は湯吞みを持ち上げ、ひと口すすった。それから視線を舞香の顔に据える。

「小林舞香」

湯吞みを置く音が、やけに乾いて響いた。

「私はず...

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