第36章 商売を奪う

矢野汐里の顔はかっと赤くなった。何か言い返そうとした瞬間、数人の女子がすでに彼女を囲んでいた。押してくるわけじゃない。ただ、そこに立って雑談しながら――一歩一歩、確実に進路を塞いでくる。

これじゃ、通れない。

視線がじわじわ集まってくる。汐里は大きく息を吸い込み、ようやく踵を返して出入口のほうへ向かった。

体育館の扉口で立ち止まる。悔しさで全身が震え、スマホを取り出して矢野郁真にメッセージを打とうとしたが、数文字で消した。

今送ったら、あまりに露骨だ。

「よっ。汐里じゃん」

横から声が飛んできた。

振り向くと、ラグビー部の木下大輝がいた。あだ名は「メガホン」。口が軽くて有名なく...

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