第51章 怖がるな

矢野郁真が追いすがってくる。

「舞香、待て!」

小林修平は立ち止まらなかった。

腕の中には小林舞香。歩幅は崩さず、急ぐでもない。ただ、舞香は感じた。抱く腕が、わずかに強く締まったのを。

無意識なのか、親指が彼女の太腿を数度、すり……そしてすぐ止まる。

舞香は思う。わざとじゃない。叔父さんは腕を怪我している。きっと痛みも強いのだ。

矢野郁真が横から回り込み、前に立ちはだかった。

「話を聞け」

肩が大きく上下し、額には汗がびっしり。なのに視線は舞香だけを射抜く。

「今は全国大会の大事な時期だ。特殊部門が調査に入ったなんて噂が外に出たら、学校の評判に傷がつく」

さらに一歩、声を...

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