第52章 もう我慢しなくていい

小林修平は、小林舞香をいちばん近い病院へは連れて行かなかった。

車は四十分ほど走り、街の中心部を外れて、標識もろくにない道へ入り込む。

舞香は窓の外をぼんやり眺めながら考え事をしていて、ルートがおかしいことに気づかなかった。

やがて車は、灰色の建物の前で止まった。玄関に看板はない。あるのは番号の羅列だけ。まるで暗号みたいなコード。

舞香はそれを一瞥して首を傾げる。

「……ここ、どこ?」

「病院だ」

修平はエンジンを切り、シートベルトを外すと、車の前を回り込んで彼女側のドアを開けた。舞香が状況を飲み込む前に、彼は腰を落として――そのまま彼女を抱き上げる。

「叔父さん、私ひとりで...

ログインして続きを読む