第60章 私の勝ち

矢野郁真は今回も「これで最後だ」と言いながら、結局また矢野汐里と三時間もだらだらと戯れていた。

彼が完全に寝落ちしたのを確かめてから、矢野汐里はそっと彼のスマホを指紋で開く。録音データを探し当て、自分のスマホへ送った。

ベランダに出て、夜風に当たりながら音声を再生する。

聞き終えた瞬間、胸の奥がすうっと冷えた。

矢野郁真の中には、まだ小林舞香がいる。

それは、話し方だけで分かった。

矢野汐里は矢野郁真を誰より知っている。もし彼の心に小林舞香が残っていないなら、彼は回りくどく説得なんてしない。立場を使って、最初から力で押さえつけるはずだ。

小林舞香は最後まで「追及しない」とは言わ...

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