第23章

病院と聞いた瞬間、桐生颯馬はぶんぶんと首を横に振った。物心ついたころからずっと、彼がいちばん怖い場所は病院だ。消毒液の匂いがとにかく苦手で、鼻先に浮かぶだけで泣きたくなる。

谷口凛華は一度だけ息子を見やる。

「じゃあ様子を見る。でも、熱が出たら病院よ」

ここ数年、母親としてそばにいられた時間は決して長くない。それでも颯馬の癖も体調の変化も、凛華は手のひらみたいに把握していた。吐いただけで熱がないなら家で経過観察でいい。だが高熱が下がらないなら、迷わず解熱の処置を受けさせるべきだ。

時間が、じりじりと過ぎていく。

いつの間にか颯馬は、凛華の腕の中で眠りに落ちていた。すぅ、すぅ、と小さ...

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