第38章

「……あなた、本当にいいお父さんね」

谷口凛華は笑いながら顔を上げ、こぼれそうな涙をぐっと押し戻した。皮肉だけを吐き捨て、踵を返して立ち去ろうとする。

だが次の瞬間、谷口健弘が彼女の手首を乱暴につかんだ。

「こうするのもお前のためだ。お前たちは結婚して何年も経つのに、情なんてないだろ。これ以上引っ張ったところで、お前に得なんかない」

「でも、あんたの妹――」

凛華の怒りに気づいたのか、健弘は途中で呼び方を変えた。

「日奈は違う。あの二人が一緒になれば、桐生朔弥が会社をもう一段上へ引き上げてくれる。お前だって恩恵を――」

「黙って。安心して。ちゃんと成就させてあげるから」

クズ...

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