第50章

瀬川尚樹は、びくりと全身を震わせた。自分でも気づかないうちに、その言葉を聞いた瞬間、眉間にかすかな笑みさえ浮かんでいた。

思考の沼に沈みかけたところで、電話口の声がまた響く。

今度は桐生朔弥だった。

「来いよ。子どもたち、みんなこっちにいる。いっしょに遊ばせようぜ」

尚樹は断ろうとした。だが、向こうは言うだけ言って、ぷつりと切れてしまう。

尚樹は小さく息を吐いた。谷口凛華に、どう伝えたらいいのか――それがわからない。

一方の凛華は、彼らが帰ると知った瞬間、心の底からほっとした。わざと二歩ほど下がり、今ちょうど来たみたいな顔を作る。

「いる? 子ども、遊び疲れたみたいだし、そろそ...

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