第63章

時は、じわじわと流れていった。

部屋にいる他の面々の視線が、一斉にこちらへ向く。谷口凛華はきょとんとしたまま、何を言われているのか分からない顔をした。

けれど、どれだけ考えても思い当たらない。

笹木明子が笑いながらからかう。

「あなたね、忙しすぎるのよ。でも仕方ないわよね。この日って、毎年のように出張に出てたもの」

谷口凛華は額を軽く叩いて、ようやく腑に落ちた。

ゆっくり腰を落とし、おばあ様の手を両手で包む。

「ごめんなさい。この数年ずっと出張続きで、会社の周年記念に出られなくて……今年は必ず顔を出します」

もうすぐ、会社の周年記念だ。

笹木グループは、おばあ様ご夫妻が一生...

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