ザ・ビガー・ボックス

口を開こうとしたが、声が出てこない。心臓がうるさいほど激しく脈打っていて、家中の人に聞こえてしまうのではないかと怖くなる。それがたまらなく嫌だった。

「すごく……」

「綺麗だって?」彼は小首をかしげ、あのお決まりの自信に満ちた様子で私の言葉を引き継いだ。

そう。でも、私が言おうとしたのはそんな言葉じゃない。極上で、息もできないほど美しくて、家族全員の目の前だというのにありえないほど親密で官能的。それが正解だ。

けれど、私はただ頷いた。

彼が私の背後に回ると、世界が少し傾いた気がした。期待感のせいかもしれない。あるいは、また呼吸を止めてしまったせいか。彼はすぐには触れてこない。背中から...

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