ヒット・アンド・ラン


~~フィン~~


デリラが俺を睨みつけて、一向に視線を外そうとしない。

彼女は部屋にひとつしかない面会用の椅子に座り、俺の左側にいる。胸の前で腕をきつく組みすぎて、まるで体を二つ折りにしようとしているんじゃないかと思うほどだ。脚は俺から逸らされているが、その目だけは――微動だにしない。一度もだ。医者が面会許可を出してから、ずっと。

「その目つき、どうにかしてくれないか?」俺は文句を言いながら、病院のベッドの上で体勢を直した。

俺の腕は頑丈なスリングで固定され、包帯とベルクロの塊で高く吊り上げられている。まるで五キロ近い重りをぶら下げているような感覚だ。

「ただでさえ...

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