ここはどこ?

差し出された彼の手を見つめる。彼のもとへ駆け寄りたい、今はそれ以外の何も望んでいない。

けれど、ただ立ち去るわけにはいかない。あんな形では無理だ。

「ママにさよならを言わなきゃ」私は言う。「他にも何人か挨拶しておきたいし。妹が出かけちゃう前に捕まえたいの。あの子、動揺してるから、私が――」

「記憶でも消すつもりか?」ノックスの声は穏やかだが、その裏に潜む苛立ちがはっきりと聞き取れる。「いいから。行くぞ」

「無理よ」

「迎えに行かなきゃならないか、バニー?」

私は呆れて天を仰いだ。彼にはどうあがいても勝てない。それに正直なところ、喧嘩なんてしたくないのだ。今日はもう十分だ。これ以上は無...

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