第104章:エレナクロス

施設内の静寂は濃密で、息が詰まるほどだった。懐中電灯の微かな光が埃の舞う空気を切り裂き、かつては細心の注意を払って維持されていたであろう空間を照らし出した。だが今、そこは時の流れに侵食されていた。鋼鉄の梁には錆がこびりつき、長く荒涼とした廊下を進むと、足元で砕けたガラスが音を立てた。

セラフィナの耳には自身の脈打つ音が鳴り響き、一歩踏み出すごとに足音は大きく反響した。胸にのしかかる歴史の重みを感じていた。この場所は、母にとって特別な意味を持つ場所だったのだ。

そして今、それは彼女にとっても同じだった。

デイモンはすぐそばに寄り添い、彼女の腰のあたりに手を添えんばかりにして進んだ。ザインと...

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