第172章:これが欲しいですか、セラ?

グリルで焼かれたステーキと炭の匂いが夜の空気に満ち、ファイヤーピットの暖かさが庭にちらつく影を落としていた。

任務も、戦略会議も、迫りくる脅威もない――緊急の用件が何一つない、稀な夜だった。

そこにいるのは、ただ彼らだけ。

セラフィナ・ヘイルはポーチの階段に腰掛け、グリルのそばでステーキの正しい焼き方をめぐってリアムと口論しているデイモンを眺めていた。

デイモンの父であるドミニク・ヘイルはその隣で、息子が親友と口喧嘩しているのを、父親だけが持ちうる静かな忍耐強さでハンバーガーをひっくり返している。

パティオの向こうでは、ゼインとテッサが自分たちだけの静かな戦争を繰り広げていた。二人と...

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