第12章 平手で彼を叩く

夏目霧子は全身の力を振り絞り、覆いかぶさっていた男を勢いよく押しのけた。

手首に力を込め、そのまま容赦なく振り抜く。

ぱん、と乾いた音が、死んだように静かな寝室に反響した。

黒崎逸臣は顔を横へ向けたまま、目に焼き付いた凶さを消しきれない。けれど口の端には、鉄の味――血の生臭さが広がった。

彼はゆっくりと顔を戻す。瞳の奥に戾気が噴き上がり、手を伸ばして彼女の肩を掴み、無理やり口づけようとする。

「触らないで!」

夏目霧子はベッドの隅へ身を縮めた。声は尖り、耳に刺さるほどだった。

黒崎逸臣の手が、空中で止まる。

そして彼は見た。夏目霧子の顔を。

涙でぐしゃぐしゃだった。

嫌悪...

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