第13章 奥様の自作自演ではない

黒い車が幹線道路を疾走し、窓の外の街並みが矢のように後方へ流れていく。

車内の空気は異様なほど重かった。聞こえるのはエンジンの唸りだけ。

黒崎逸臣は苛立ちまぎれに胸元のネクタイを乱暴に引いた。

目を閉じれば、さっき寝室で見た夏目霧子の、あの決別の眼差しが脳裏に焼きつく。氷のように冷たく、迷いの欠片もない目。

そして――あの一言。

「あなたなんかより、みんな千倍も一万倍もマシ」

黒崎逸臣の顔が醜く歪む。次の瞬間、拳が革のアームレストに叩きつけられた。

ドン、と鈍い音。

運転席の運転手がびくりと肩を跳ねさせ、息をすることすら忘れたように固まる。

黒崎逸臣は窓の外へ視線を刺し、し...

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