第147章 離婚した

翌日、午後2時。

裁判所の門前。

夏目霧子は階段の下に立っていた。

今日の彼女は、飾り気のないベージュのトレンチコート。長い髪は適当に後ろでまとめている。

手の中には薄い書類袋。身分証と、財産分与の協議書が入っていた。

空はどんより曇り、風が肌を撫でるたび、ひやりとした冷たさが染みる。

それでも霧子の胸に長くのしかかっていた石は、少しずつ、確かにずれていくのが分かった。

やっと掴んだ機会。

この日を、どれだけ待ったことか。

2時50分。黒崎逸臣は、まだ来ない。

萩原青真が焦れてスマホで時刻を確認する。

「……あいつ、やっぱりビビったのかな? 三時って言ってたのに、もうこ...

ログインして続きを読む