第161章 残念

瀬戸海介は指先にわずかに力を込め、口の端をゆるく吊り上げた。

――面白すぎる。

物心ついた頃からずっと、黒崎逸臣には何もかも一枚上を行かれてきた。

成績も、家業も。黒崎逸臣はいつだって勝者で、瀬戸海介はいつだってその背中を見上げる側だった。

だが今回は違う。

天が、手札をこちらに寄越した。

この秘密を握ってさえいれば、黒崎逸臣は永遠に――何も知らない哀れな道化のままだ。

瀬戸海介は踵を返して外へ出た。足取りは、さっきよりずっと軽い。

G市、山腹の屋敷。

二階の書斎の灯りは、夜更けまで消えなかった。

夏目霧子は広い机に身を伏せ、筆を握る。紙の上には、細かな鉛筆の線がびっしり...

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