第29章 黒崎逸臣は別れないと言った

黒崎逸臣の顔色が、瞬く間に険しく沈んだ。手に込める力も、わずかに強まる。

「何をでたらめ言ってる」

「でたらめ?」夏目霧子は冷え切った声で言い返す。「カードにちゃんと書いてあったでしょう。黒崎社長は、やったことも認められないんですか」

黒崎逸臣は眉をきつく寄せた。薔薇だのカードだの、彼にはまるで話が見えない。

ただ分かっているのは、ここ数日、彼女が病院で祖父につきっきりで疲れ切っていたこと。だから今朝は少しでも空気を和らげようと思ったのに、車の中で散々皮肉をぶつけられた。

そのせいで午前中ずっと苛立ちっぱなしだった。わざわざ秘書に命じて、このネックレスまで選ばせたというのに。

な...

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