第31章 強引なキス

「俺たちは……違う!」

黒崎逸臣は吐き捨てるように言い、手の甲に青筋を浮かせた。

助手席のシートに身を預けた夏目霧子は、下腹部の鈍い痛みをまだ抱えていた。

さっきレストランの入口でつまずいた。浅野弦に受け止められたとはいえ、心臓がひゅっと縮むような恐怖は残っている。

一度、ゆっくり息を吐く。

込み上げる不快感を喉の奥へ押し戻した。

「ええ、違うわね」

夏目霧子は嘲るように笑う。

「彼女はひ弱で、ひとりじゃ何もできない。だからあなたみたいな『優しいお兄ちゃん』が、いつでもどこでも気遣ってあげなきゃいけないんでしょ。じゃあ私は何? 黒崎家の奥様って席を埋めてるだけの、ただの盾」

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