第36章 黒崎逸臣が街中で夏目霧子を探す

黒崎逸臣は、どこを探しても夏目霧子を見つけられず、苛立ちのままタイヤを蹴りつけた。

「いったい、どこへ行った」

シャツの襟元を乱暴に緩め、ボタンを2つ引きちぎるように外す。胸が激しく上下していた。

夏目霧子が行きそうな場所は、もう全部当たった。

会社にもいない。本邸にも戻っていない。

なら、いったい誰を頼る。

そのとき、不意にひとつの名前が脳裏へ浮かんだ。

林田。

あいつが夢の中でまで呼んでいた男。

離婚してでも忘れられなかった、昔の男。

――あそこか。

きっと、あいつに会いに行ったんだ。

黒崎逸臣の奥歯が、ぎり、と鳴る。

夏目霧子。

たいした度胸じゃないか。

...

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