第40章 父親の遺言書

黒崎逸臣は、水野菜々美のいかにも泣きそうな顔を見た瞬間、こめかみがずきずきと脈打つのを感じた。

以前なら、辛抱強く二言三言あやしたかもしれない。だが今、頭の中を占めているのは、さっき夏目霧子が口にした「末永く」という言葉だけだった。

黒崎逸臣は水野菜々美が掴んでいた手を乱暴に振りほどく。

「菜々美、何でもかんでも霧子のせいにするな」

声は氷のように冷たかった。

「――あいつはどこだ」

水野菜々美は、ぴたりと固まった。空中に取り残された手が、微かに震える。黒崎逸臣がそんな口調で言うとは思っていなかったのだろう。

「逸臣……」

「二度は聞かない」

水野菜々美は下唇を噛み、エレベ...

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