第46章 駐車場で立ちくらみがした

夏目霧子はデザイン部のトイレのドアを押し開け、洗面台の前に立った。

鏡に映る自分の頬は、どこか不自然に火照っている。とくに唇がひどい。赤く腫れ、皮が一部めくれていた。

黒崎逸臣――あのクズが噛んだ痕。

さっきのキスは甘いものじゃない。あれは、所有の宣言だった。

霧子は奥歯をぎり、と噛みしめる。すると背後で、ドアが開く音がした。

入ってきた水野菜々美が、鏡越しに霧子を見つける。

彼女の視線はまっすぐ、霧子の腫れた唇へ吸い寄せられた。

それは菜々美にとって、耳元で鳴る平手打ちみたいに痛かった。これまで積み上げてきたものを、たった一瞬で嘲笑われた気がしたのだ。

「……やるじゃない」...

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