第56章 命を落としかけた

黒崎雅美は足首を押さえ、泣き声にわざとらしさを混ぜた。

「夏目霧子、あんたどれだけ性根が腐ってんの? ちょっと言っただけで、殺す気?!」

夏目霧子の顔色が、さっと白くなる。手の中のものを、折れるほど強く握りしめた。

まただ。

周囲の「面白がってる視線」が、皮膚を薄く剥がしていくみたいに刺さる。逃げ場がない。

口を開きかけて、飲み込む。

説明したところで信じられない。そういう役回りだと、彼女はもう知っている。

――これまで何度も、水野菜々美に濡れ衣を着せられたときと同じように。

周りの招待客たちがグラスを止め、いっせいにテラスへ目を向けた。

ひそひそ声が、波のように押し寄せる...

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