第58章 浴室の情事

浴槽の湯は揺らめくほど光を帯びていくのに、熱だけがじわじわと上がっていく。

浴室は湯気で白く霞み、息をするたび肺の奥まで熱がまとわりついた。

黒崎逸臣の掌が夏目霧子の腰を掴み、そのまま自分の胸へ押しつける。

濡れきったシャツ越しに、ざらついた布の目が柔らかな肌を容赦なく擦り、ひりつく。

夏目霧子は両手で彼の胸を押し返した。

「やめて」

男は聞こえないふりをして、首筋に顔を埋める。横から噛みつくように歯を当て、ゆっくりと撫でるように擦った。

びくり、と霧子の身体が跳ねる。肩の布を掴む指に力がこもった。

――お腹の中には、まだ小さな命がいる。こんなふうに乱暴にされるわけにはいかな...

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