第59章 そっとして、お腹に子どもがいるから

黒崎逸臣は片手で夏目霧子の手首をがっちりと掴んだ。

もう片方の手は、彼女の細い腰を握り潰すように締め上げる。きっと翌日には紫色の痣が浮くほどの力だ。

「――これからは、浅野弦に近づくな」

耳たぶすれすれに唇を寄せ、荒い息を落とす。かすれて掠れた声が、熱を帯びていた。

「聞いてるのか?」

夏目霧子は顔を背け、洗面台の縁に綿棒が触れた。ひんやりした感触と、さっきまでの熱の残滓が交互に襲い、身体がぶるりと震える。

歯を食いしばり、何も言わない。

黒崎逸臣は鼻で笑うと、腰をぐっと押し出した。動きは乱暴さを増し、容赦がない。

「っ……!」

夏目霧子が思わず声を漏らす。爪が陶器を引っか...

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