第7章 黒崎逸臣が頬にキスされるのを目撃する

黒崎逸臣の身体が、ほんの一瞬だけ強張った。

病室の空気が抜け落ちたみたいに、死んだような静けさが落ちる。

黒崎逸臣は、蒼白なのに揺るがない夏目霧子の顔を見つめた。喉仏が上下し、しばらくして、胸の痛みを噛み殺すように冷笑を絞り出す。

「いい。霧子。答えてやる。離れたいなら、離れればいい」

吐き捨てると、彼は背を向けた。歩幅は大きい。病室に一秒だって残りたくない、そんな背中。

夏目霧子はベッドに座ったまま、廊下へ遠ざかる足音を聞き、張り詰めていた背筋が少しずつ崩れていった。

――終わった。やっと。

目を閉じる。手のひらが無意識に、まだ平らな下腹へ触れた。

この子と一緒に、彼から完...

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