第8章 誘拐から救出

夏目霧子はスマホを握り潰すように掴み、録音ボタンを押した。指先に力が入りすぎて、かすかに震える。

録音が最後まで回り切った頃には、背中にじっとり汗が滲んでいた。

これさえあれば、水野菜々美の薄っぺらい仮面を剥がせる。黒崎逸臣だって分かるはずだ。掌で大事にしている「妹」が、いったい何者なのか。

霧子はスマホを内ポケットにねじ込み、踵を返して足早にエレベーターへ向かった。

回廊の先は薄暗い。酒臭い男たちが数人、肩を組んでふらふらと近づいてくる。

霧子は身を引いて避けようとした――その瞬間、うなじに走る鋭い痛み。

声すら出せない。視界がぐらりと反転し、闇が一気に押し寄せた。

……

...

ログインして続きを読む