第105章 彼女は桜井家の犬に過ぎない

土曜日の早朝、綾瀬悠希はコップに残った最後の牛乳を飲み干すと、出かける支度を始めた。

 桜井家の大奥様が声をかける。

「悠々ちゃん、今日は土曜日だろう? どこへ行くんだい?」

「ちょっと用事があって。お祖母様こそ、朝食が済んだら散歩にでも行ってきて。お友達と麻雀でもして、家にばかり籠っていないでね」

「昼飯には戻るのかい?」

「戻らない」

「夜は?」

「分からない。たぶん戻らないと思う。お祖母様、ちゃんとご飯食べてね」

 大奥様は寂しげな表情を浮かべた。悠々ちゃんはいつも家にいない。一体何をしているのか見当もつかない。

 だが、ふと思い直す。彼女がこの家に住んでくれているだけでも御の字だ。...

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