第143章 彼はテクニックがすごいのか

「結婚? いったい誰と?」綾瀬悠希は驚きを隠せずに尋ねた。

「東都、松坂家の三男。松坂成一よ」楠本南はいたずらっぽく片目を閉じてみせる。「すごいでしょ? あの名門・松坂家だもの。嫁げば私も晴れて『若奥様』ってわけ」

 悠希はふと、昼間の藤堂譲の言葉を思い出した。彼は東都へ出張し、松坂家の人間とも接触していた。どうやら、この情報を事前に掴んでいたらしい。

 南は笑っているが、心の内では泣いていることを悠希は痛いほど理解していた。

 好きでもない相手との結婚を、手放しで喜べる女などいない。

「南、彼に会ったことは? 好意はあるの?」

 その問いに、南の瞳がみるみる涙で潤んでいく。「好意な...

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