第144章 あの無粋な藤堂社長よりずっといい

「ストップ!」

 綾瀬悠希はぴしゃりと遮った。

「あんた、なんて破廉恥なことを言ってるのよ。いい歳して男の手も握ったことがないくせに、よくそんなセリフがポンポン出てくるわね。恥ずかしくないの?」

 楠本南は不服そうに唇を尖らせる。

「先に言い出したのはそっちじゃない。悠希が恥ずかしがらないなら、あたしだって恥ずかしがる理由はないわ」

「はいはい、あっち座ってて」

 楠本南を追い払うと、綾瀬悠希は自分の耳がカッと熱くなるのを感じた。

 あの晩は薬の影響もあったのかもしれない。だが、藤堂譲との行為がもたらした、あの魂まで溶けるような快楽の感覚は、今でも鮮烈に記憶に焼き付いている。

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