第156章 藤堂さんは抜け目がない

「知っているが、親しくはない」と、藤堂譲は短く答えた。

「はぁ……」松坂詩織は困り顔を作ってみせた。「三番目の兄さんから彼女の話なんて一度も聞いたことがなかったのに、いきなり結婚だなんて。兄さんが騙されていないか、本当に心配で」

 綾瀬悠希は茶を一口啜り、その瞳に読み取れない色を浮かべた。

(松坂家の兄妹仲は悪くないようね。南渓がそこに加わって上手くやっていけるかしら。仲間外れにされなければいいけれど)

 藤堂譲は綾瀬悠希に視線を向けた。「楠本は悠希の親友だ。楠本のことを知りたいなら、彼女に聞けばいい」

 いきなり話を振られ、綾瀬悠希は弾かれたように顔を上げた。周囲の視線が一斉に自分...

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