第159章 家に他人がいるとは知らず

「あなた!」

 楠本南が声を張り上げようとした瞬間、綾瀬悠希がすっとその腕を引いた。

「確かにまだ見つかってないわ。ご心配ありがとう」

 悠希は薄く笑みを浮かべ、冷ややかに言い放つ。

「ただ、あなたの立場も私と似たり寄ったりじゃない? その人と一緒に転がり込んで一年になるけど、楠本家の戸籍に名前は入ったのかしら?」

 楠本美雲の張り付いたような笑顔が、ついに崩れ落ちた。顔色は瞬く間に土気色へと変わる。

 綾瀬悠希がこれほど弁が立つとは予想外だったようだ。

「行こう、南。ご両親は在宅? 久しぶりにご挨拶したいわ」

「ええ、いるわよ」

 二人の親友は腕を組み、楠本美雲に一瞥もくれずに歩き出...

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