第16章 自業自得

凌楽悠が到着したのは昼近くになってからだった。彼女は午前中に起きた出来事を全く知らず、ただ同僚たちが自分に向ける視線がどこか奇妙だと感じただけだった。

終業時間が近づくころ、彼女はようやくその理由を知ることになる。

数人の富豪の夫人たちが先頭を切ってオフィスに乗り込んできた。ぐるりと見渡し、凌楽悠の席を特定すると、赤い巻き髪の女性が彼女のそばに歩み寄った。

「あなたが新入りの綾瀬先生?」

「ええ、私ですが、何か御用でしょうか?」

これで夫人たちは、凌楽悠がコネ入社だということを少し信じ始めた。彼女のこの落ち着き払った態度は滅多に見られるものではない。自分より強い立場の人間を前に...

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