第17章 彼女を私に会わせる

藤堂譲が自分に気づいたのを見て、加藤美咲は不自然に髪をかき上げ、はにかむように微笑んだ。

しかし、彼女のそんな仕草を藤堂譲は全く意に介さず、ちらりと一瞥しただけですぐに顔を背け、綾瀬悠希の方を見てしまった。加藤美咲は気まずいまま自分の席に戻るしかなかった。

「綾瀬先生、今日、家で新鮮な蟹が手に入りまして。若葉があなたと一緒に食べたいと言っているのですが、よろしければ家で食事でもいかがですか」

「藤堂さん、それは少し……」

以前の綾瀬悠希は、先生と呼ばれるのを楽しんでいた。だが、藤堂譲と出会ってからは、そう呼ばれるのが嫌になっていた。

彼が口にするその呼び方は、まるで自分の...

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