第193章 彼に少し分けてあげられたらいいのに

綾瀬悠希は受話器を握りしめ、即座に問いかけた。

「容体は?」

「先ほど医師が往診に来られました。大事には至りませんが、どうしても薬を飲もうとなさらず……私どもの手には負えませんので、お電話差し上げた次第です」

「藤堂譲は帰宅していますか?」

「坊ちゃんは今夜、会食の予定が入っておりまして……お戻りは深夜になるかと」

 綾瀬悠希は眉をひそめ、執事の田中に問う。

「若葉ちゃんが病気だということは、彼に伝えてあるのですか?」

「いえ、まだ存じておりません」

「分かりました。すぐに向かいます」

 通話を切ると、綾瀬悠希は鞄を手に取り、オフィスを飛び出した。

 エレベーターに乗り込むと、彼...

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