第198章

藤堂譲は、その言葉に思わず口をつぐんだ。

彼の辞書に、「子供を見捨てる」などという文字は存在しないからだ。

「調べようともしなかったのに、どうして真実がわかるんですか?」

綾瀬悠希は冷淡という鎧を纏うことに慣れきっていた。

「……もう、どうでもいいことですから」

「だが、君はこの前言ったはずだ。『逃げても問題は解決しない』と。普段はあんなに肝が据わっているのに、なぜこの件になるとそう臆病になる? 万が一、家族も君を捜しているとしたらどうする」

悠希は静かに首を横に振った。

「逃げているわけじゃありません。ただ……今の私にはもう、肉親の情なんてものを繋ぎ止める気力が残っていないんで...

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