第24章 綾瀬先生は本当に愚かだ

「わ、私、先に失礼します」綾瀬悠希はソファの上のバッグを掴むと、そそくさと逃げ出そうとした。

「綾瀬先生、昨夜あなたが私の部屋で一晩過ごしたことを誰かに知られたいとでも?」

綾瀬悠希は固まった。

ここ数年、藤堂譲に色恋沙汰のスキャンダルは一切なく、女性と親しげにしている写真すら一枚も出回っていない。どうやら彼は潔癖な男らしい。

もし自分のせいで藤堂譲の名声を傷つけてしまったら、ただでは済まないだろう。

綾瀬悠希は素早く部屋の中を見渡した。窓の向こうは庭園だ。もしここから飛び降りて裏口からこっそり出れば、誰にも見つからないはずだ。

「そ、それじゃあ、窓から出ます」

言うが早いか、綾...

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