第40章 心がときめく

関口裕スタジオのもう一つのメイクルームで、桜井恵那はメイクを終えたばかりだった。鏡の前に立って何度も自分を眺め、今日のメイクとスタイリングに一点の曇りもないことを確認すると、藤堂家へ向かう準備を始めた。

その時、彼女のアシスタントである紅ちゃんが駆け込んできた。

「顔ちゃん、さっき誰を見かけたと思う?」

「ここは関口裕スタジオよ。誰がいたって普通でしょ。そんな大げさな顔しないで」

「違うの」紅ちゃんは焦ったように言った。「綾瀬悠希よ。さっき、関口デザイナーが直々に彼女のスタイリングをしてるのを見たの。ものすごく綺麗で、芸能人よりずっと素敵だったわ!」

「ありえない。絶対に見間違いよ!」...

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